唐墨について
墨のなかでも中国製の墨を「唐墨(とうぼく)」という。「徽墨」と称されるように、中国では宋時代から明、清時代まで中国の製墨業が徽州(安徽省屯渓市)に集中し、多くの墨匠を輩出している。特に、清の乾隆帝時代の「四大家」(曹素功、汪近聖、汪節庵、胡開文)が有名である。現代にいたるまでに統合、公私合営、国営などを経たが、安徽省を中心に「胡開文」や「曹素功」などのブランド名で製墨が行われている。また、一般的に唐墨は墨の寿命が長く、時間とともに厚みや味わいが出てきて、古墨としての価値が高くなる。
唐墨の製法
唐墨の原材料は、煤(すす)、膠(にかわ)および香料である。これらを配合し、金槌で叩いて練り合わせて、固めることでつくられる。唐墨の配合比率(煤と膠)および膠の種類・粘度は、以下の通りである。
種類 | 配合比率(煤:膠) | 膠の粘度 |
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唐墨 | 10:12 | 低 |
唐墨の製法
特徴 | 説明 |
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色 | 白みを帯びた黒色であり、品位と深みを備えている。素朴さが乏しい。 |
強度 | 弱く割れやすい。※ |
色の力強さ | 新墨では力強さがないが、古墨になると力強さと厚みが出てくる。 |
伸び | 伸びが良いものが多い。 |
滲み(にじみ) | にじみは美しい。紙によく浸透する。 |
寿命 | 寿命は長く、古墨になるにしたがい、力強さと厚みがでる。美しいにじみがでて、味わい深い。 |
※ 日本の高温多湿の気候では、膠のタンパク質劣化が進みやすく、割れやすい。
唐墨の大きさ
唐墨の大きさ(サイズ)は、墨の重さで表します。その単位は「丁」である。
サイズ | 説明 | 重さ |
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1丁 | 重さ約500gのものを1丁とされる。 | 約500g |
2丁 | 1丁の2分の1のもの。 | 約250g |
4丁 | 1丁の4分の1のもの。 | 約125g |
8丁 | 1丁の8分の1のもの。 | 約63g |
16丁 | 1丁の16分の1のもの。 | 約31g |