硯拓の方法
硯を違った視点で楽しむ方法として、硯拓の方法を解説する。硯拓をとることで、硯に施されてる細かい彫刻を楽しむことができ、硯を2倍楽しむことができる。しかし、基本的な技法をマスターしないと貴重な硯を汚す結果となる。そのため、家の中にある凹凸物で一度練習することを推奨する。
準備物一覧
墨 | 硯を汚すおそれが少なく、用紙が乾かなくても、滲まず採拓可能な油性の墨がよい。 |
拓本用紙(拓紙) | 彫刻具合によるが、基本的に標準的な厚さの拓本用紙がよい。 |
タンポ | 拓紙に墨を付着させていく際に、使用する。 |
打刷毛 | 拓紙を硯に密着させ、彫刻の凹凸部から空気を逃すのに使用する。 |
布 | 硯に拓紙を密着させる際に、紙面上に被せて打刷毛で叩く際に使用する。拓紙表面の保護に使用するので、目の詰まった綿布などがよい。 |
綿 | 硯に拓紙を押し付ける際に使用する。 |
霧吹き | 拓紙に水分を与える際に使用する。 |
ほご紙 | 湿った拓紙の水分調整に使用する。吸水性の高いチリ紙などがよい。 |
硯(被拓物) | 採拓したい硯。 |
タンポの作り方
タンポは、書画でいう筆と硯の役割を担う道具である。タンポポを用いて、彼拓物(硯)の表面に水貼りした紙に墨をつける。タンポは、弾力ある適度な固さと形が大切なポイントである。彼拓物である硯の大きさ、形状、彫刻の具合に応じて大小、数個のタンポが必要である。
材料
- 打ちタンポ用の絹布(紅絹、羽二重など布目が細かいもの)
- 親タンポ用の布(絹、綿布など)
- 綿(化繊綿、真綿など)
- 針金
- ビニールテープ
- ペンチ
手順1
まず、必要な大きさに綿を切る。綿の切り口を内側に入れて丸め、適当な固さまで綿を丸めながらしぼる。
手順2
布の中に綿を入れて包み、首のところをしっかりとしぼって針金をまきつける。
手順3
針金をペンチでしめ、はしっこに小さな綿を入れてとめる。次に、余った布を開かないように針金でまいておく。
手順4
最後に、ビニールテーブで軸のところをしっかりとまき、タンポの完成。
手順
硯拓の手順は、まず彼拓物である硯に対して拓紙(拓本用紙)を水貼りする。その後、タンポを用いて打墨を行う。
水貼り
手順1

硯に拓紙をのせ、その上から霧吹きで均一に湿らせる。
手順2

拓紙が湿ったら、化繊綿を丸めて、軽く押し、少しずつ密着させていく。この際、化繊綿をひねったり、横にこすると拓紙が毛羽立ったり、シワになるため注意する。中心から放射状に気泡を送りだすように少しずつ外側へ押す。気泡が出たら、硯の形が出るように、少し強く押していく。
手順3

拓紙の上に布を当て、打刷毛で叩き、拓紙を硯に密着させる。この時も気泡が外にでるように叩く。布をはずし、化繊綿で拓紙全体を押さえて、気泡や拓紙の浮きがないことを確かめる。気泡や浮きが見られる場合は、再度布を当て、打刷毛で叩き、気泡と浮きがなくなるまで繰り返す。
手順4

拓紙の湿りを均一にするため、保護紙で余分な水分を取り除く。少し白くなったときに、もう一度押し付けて密着させる。この状態ではじめて打墨をすることができる。
打墨
挿手硯とは、太史硯の高さが低くなった硯のことである。硯背の手前が空いており、手を挿し入れて持てるため、この名前となった。必ず左右に脚があり、高さが五センチ以下である。鳳池硯から変化したものと考えられている。
手順1
拓象より親タンポに少し墨を取り、親タンポと打タンポとをよく摺り合わせて均一に打タンポへ墨を移す。
手順2

打タンポの墨の調子を、別の拓紙と同じ紙の上で試し打ちを行う。打タンポの墨にボタつきが無い状態で直角に軽く打墨をはじめる。一度に仕上げることをせず、女性が化粧する際のパフのリズムで軽く打墨する。
手順3

墨の調子を見ながら、タンポを直角に、軽く叩くようにして打墨を進める。打タンポの墨は、常に均一に親タンポからこすり取るように補充する。ポイントとなる箇所は、小さいタンポで丁寧に打墨して仕上げる。打墨が完了したら採拓終了。拓紙を静かに一方向から、持ち上げるようにはがす。採拓後、硯を汚さないために、拓紙の裏面をみて墨が透過していないことを確かめる。
さいごに
完成した硯拓に対して裏打ちを行うことを推奨する。これを行うことにより、凸凹した硯拓を平らにし、額縁等にいれやすくなる。自分で行うか、表具屋さんに依頼する(数百円程度で頼める)。そして、裏打ちした硯拓を額縁にいれて、かざったりするとよい。美麗な硯の彫刻の具合がわかり、違った視点で楽しむことができる。